宇治山田

投稿日:2012/02/26
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小学生が書いたポスターコンクールがあり、何故か展示会場で待機する係をしてきました。
商店街のアーケードの一画に会場がありました。
中に入るとボード板に500枚程の作品が貼られており、○○賞などの優秀作品も既に決定していました。
私は金曜の10時〜13時の担当です。
会場の貼紙を読むと、本日から公開し、2日後の日曜日に表彰式やくじ引きのイベントを開催する流れでした。
寒い中、ポスターに囲まれて一人で座っていると、自分自身の色んな箇所を否定され続けている気分になります。
しばらくして、いまだ来場者が一人も来て無い事に気がつきました。
「アンケートを書いてもらう」とか「来場者の数を数える」みたいに、何かするべき事は言われてなかったのですが、マズイ気がします。
何より変化が無いまま13時まで「否定時間」が続くと、精神的にどうにかなる危険がありました。
そこでアーケードに出て、前を通る人々に呼びかけをする事にしました。
平日の午前中の寂れた商店街、『いらっしゃいいらっしゃい〜ポスターあるよ〜コンクールだよ〜』の声が響きます。
買い物中のおばさん・リハビリ中のお爺さん・犬の散歩中のお姉さん・参加した子供の親等が立ち寄ってくれました。
自転車で行きすぎたのにUターンしてきたおばさんもいて結構な人数です。
更に人混みが人を呼ぶシステムが稼動し「あら〜○○さん久しぶり〜」とポスターそっちのけで、座って話してるだけの人もいます。
そこへ乳母車を押したお婆さんが通りました。
「何をしておる」
「子供の書いた絵が飾ってあるんですよ」
「絵かい」
「はい、是非見てって下さい」
「息子は絵かきでの、美大を出とる」
「へえ、そうなんですか」
「細い筆で宇治山田駅を書いた」
「はあ、凄いですね」
「油絵や」
「油絵ですか」
「あんなあ…どんだけ上手でもなあ」
「…はあ」
「…絵は売れん!」
と言い残し歩いて去りました。
気づけば13時でした。


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