原付少女

投稿日:2013/03/21
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車を運転していると、後方から原付がやってきました。
通常、原付は信号などで止まるとスペースがある限り先頭へ行く乗り物です。
後ろにいる原付もそうであろうと、信号で止まりましたが前へ行く気配がありませんでした。
だからといって何という訳ではないのでその後も運転を続けていましたが、
今度は信号で止まる度に原付のブレーキが遅くぶつかりそうな感じになっています。
私は過去に3回オカマを掘られた事がありましたので、
後方車のブレーキングには結構気をつけています。
原付もまた然り、です。
コノヤロウと言わんばかりにルームミラー越しに原付を確認すると、
しきりに顔をぬぐっています。
これはきっと花粉症の人で目がかゆくてブレーキが遅れているのだろう、
そう思い信号付近に差し掛かると早めにスピードを落とし、
原付に注意を促す形の走行をしていましたが、どうも様子がおかしいのです。
苦渋の表情を浮かべながら運転しているのです。
そんなに辛いならゴーグルとかすりゃいいじゃん、と思っていましたが、
信号で止まった際に再度見ると、その苦渋の表情プラス肩を震わせしゃくり声を上げています。
そう、泣いているのです。
原付の運転手は女性でしたが、運転しながら号泣しているのです。
私は今まで、原付を運転しながら泣く人を見たことがありません。
車と原付の配置上、彼女が泣いているのを知っているのは私だけです。
もちろん涙の理由は分かりません。
しかし女性でしかも若いと来れば、泣く理由は失恋くらいしか思い浮かびません。
なぜか私まで悲しくなってきました。
ブレーキランプ4回点滅、「ガンバレ」のサインでも送ろうかと思うくらいでしたが、
伝わりにくいエールではなく、もっと何かいい方法はないだろうか。
そこで私はCD入れからブルーハーツを取り出し、
信号が止まった際に大きめな音で「人にやさしく」をかけ、
大声で歌いました。
歌いながら彼女を確認すると、耳にはイヤホンが付いていました。
私のエールは歩道を歩く男子学生に「何じゃコイツ」的な目で見られて終わりでした。
その後、私は左折をして彼女と離れましたが、
心の中で思いました。
「聞こえてほしい、あなたにもガンバレ」


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