白蟻業者

投稿日:2013/10/21
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シロアリ駆除の業者が、事前に状況を把握したいとやってきました。
名刺を渡され、すでに畳が一枚ない悲惨な寝室へ案内しました。
事件現場を見て業者は『やっぱりココですね』と呟きました。
理由を聞くと、以前に隣の洋間でシロアリ駆除工事をしたらしく、
私の住んでるアパートは、和室・洋間、和室・洋間、和室・洋間、と並んでるみたいで、
駆除済みの隣の洋間から、地下を通ってマイ和室へ流入した可能性が大なんだと、
今後のご近所付き合いを考えさせられる衝撃の事実を告げられました。
このアパートは縁の下が無い構造の為、風の通りが無くシロアリ的には快適な環境なんだそうです。
基本は鉄筋コンクリートですが、木があればものともしないらしく、
穴を空けては砂を運び、穴を空けては砂を運びして、どんどん巣を拡大させてくんだとか。
それならばと洋間へも案内すると、
業者は床を「ドンドンッ」と手で叩きだします。
窓際の一角だけは「コンコンッ」と軽い音がし、
床下の木材をコンコン叩きながら、「このラインも全て食われてますね」と恐ろしい事を言いました。
隣からのシロアリは和室を食い尽くし、押し入れや壁の地下を突破した後、洋間へ突入済み。
わが家の窓際はすでに壊滅状態と言われました。
工事は床やらベランダのコンクリートやらに小さな穴を開け、
その穴にシロアリが嫌う薬品を埋め込みフタをする流れで、
「こちらの部屋の規模なら半日もあれば」との事。
「薬品は人体に影響はほぼなく、工事後は即、普通の生活ができるから安心ですよ」と唆され、
早速工事を申し込みました。
しかし借家住まいの悲しいサガで、大家さんの許可待ちとなり、
しばらくの間は、気持ち悪さの為に窓際には近寄らない生活を強いられる事になります。
チェックが終わった後も、業者は帰らずに話を続けます。
「実はこの上の部屋のベランダの柵に、コウモリが住み着いてまして、ただ今そちらの駆除も許可待ちなんですよ、フンは大丈夫です?」
そう言えば布団を干そうとすると、毎回ベランダに黒い小さな塊が並んでました。
ホウキで掃いて雑巾で拭いてを繰り返していましたが、
一晩で結構な量があり、ずっと何か解らなかったのですが、
あれらは全てコウモリのフンだったと解明しました。
夜な夜なコウモリのフンに包まれて夢を見ていた訳です。
あまりにもショックがでかい私に、かける言葉が見付からない業者は帰る準備をし、
つられて私も玄関まで送りました。
玄関で「ではシロアリさんの方は私どもから大家さんの方に報告をして、許可を取らせて頂きます。日程の方は後日連絡させて頂きます」と業者は言い、
私が「なんで今『シロアリさん』って『さん』付けたん?」と聞くと、
「我々は歩いているアリさんでさえも殺さない教育を受けています。駆除をするからと言ってむやみやたら殺生するのは、間違いですから」と言い残し去ってきました。
逆のお隣りさんから恨まれる日は、そう遠くありません。


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