入賞記念

投稿日:2012/10/31
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生業を何と言ってよいのか解らない友人がいます。
出会ったのは確か十五、六年前でしょうか。
その時分は、私は大人で、ソイツは中学生か小学校高学年でしたので、随分と年下のハズです。
「漫画家になりたい」が口癖で、
マントをまとった主人公のサラリーマンとウサギが右往左往する漫画を、
チラシの裏に描いたのを見せられたものです。
サラリーマンの容姿は、私をモチーフにしていました。
何か事件が起こり、どこからともなく私風のサラリーマンが現れます。
毎回登場シーンは、片足を空気椅子に乗せている姿です。
原型は、『波止場でハードボイルドが海を見ている』でしょう。
足の下には何も無く、点々で四角形が描かれており、主人公のおとぼけぶりを表現していたのだと推察されます。
ウサギは手塚治虫で言うと、『ピノ子』か『アッチョンプリケ』みたいな役割で、
サラリーマンに助言をしたり、無関係な行動をします。
物語的には、チラシ一面分が限度でしたので、深みのある作品ではありません。
私は、漫画以外では下ネタが大好きなソイツに『画伯』の称号を与え、正しい道へ導こうと苦心しました。
ソイツも名付けられて以降は『○○画伯』と自称して、下ネタから足を洗った生活をしだしました。
そらから年月は過ぎ、先日久しぶりに連絡がありました。
漫画家を目指して上京し、何故かジェームス三木のシナリオ学校に入学。
アルバイトで食いつなぎながら、様々なコンクールに応募していたんだそうです。
そして紆余曲折の後、この度、初めてとあるシナリオのコンクールで見事入賞したんだとか。
副賞の賞金を近々手に入れるので、
お礼替わりに、寿がきやか何かを奢ってくれるつもりみたいでした。
「おめでとう」と電話を切った後、そのコンクールをネットで調べると、確かに受賞者の欄に名前がありました。
『○○画伯』では無く、彼女の本名で載ってました。
シナリオの中身は『若い女性の性衝動を赤裸々に綴った』作品のようでした。
私は彼女に対して、回り道をさせてしまっていた事に気付きました。


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