近所床屋(2)

投稿日:2013/09/09
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(昨日の続きです)
しばらくして、座席の様子をチラ見して驚きました。
結構な時間が経過したにもかかわらず、まだ「蒸しタオル頭乗せ終わり」の状態だったのです。
時計を見ると10分かかってます。
何事かと耳を澄ませば、座席のお爺さんが話してます。
曰く「最近の韓国と中国はけしからん!弱腰の日本もどうかしている!」
みたいな内容です。
剣幕に圧倒されていた店主も、業務を再開し、ようやくカットへ。
カット中もお爺さんは喋り続けます。
曰く「飲食店の店員が悪さをするのはけしからん!自慢げにネットに載せるのもどうかしている!」
みたいな内容です。
店主は今度は手を止める事無く、カット業務を遂行しながら、「そうっすよねぇ」と生返事で対抗しつつ、座席を倒して「蒸しタオル顔乗せ」へ移行します。
顔にタオルを乗せられてもジジイは、まだモゴモゴと喋ってますが、
中身はさっぱり解りません。
諦めたのか始めて黙りました。
しかし、顔のタオルを取ると、待ってましたとばかりに喋り出しました。
しかも店主が生返事で逃げれない様に、
語尾に「どう思う?」と付けだしたのです。
曰く「カミナリで買ったばかりの友人のテレビが故障した。どう思う?」
曰く「学生時代は大阪でゲバ棒を持って運動をしていた」
曰く「だから、どっちかと言えば(声をひそめて)左翼的やった。どう思う?」
曰く「出始めの頃は電卓が30万した」
曰く「その電卓を買う人を十人集めたら一台10万にするって話に乗って集めた」
曰く「しかし一台12万にしかならなかった」
曰く「でも18万安くなったから皆喜んだ。どう思う?」
曰く「インターネットを毎日している」
曰く「週に二日間は朝までネットをして徹夜」
曰く「年をとっても情報は自分で捜さなければならぬ。どう思う?」
マシンガントークの中、携帯電話の音が鳴り響きました。
ジジイは話を止め、不機嫌そうに私の座る待合室の方を見て、
「最近の若いモンはエチケットがなっとらん」的な雰囲気を出しましたが、
音はジジイのベストからでした。
店主がベストを渡すと前ポケットから出したスマホを一瞥し、
「コレはエエんや、今度NTTに行って聞かなアカンのや」とベストのポケットにしまい、店主に渡しました。
店主がハンガーに戻すと、再度鳴り響きましたが、
ジジイは「エエよ、ほっといてエエ」と言い、鳴り響かせ続けます。
なぜ先程手にした時に、マナーにする等の対策をしなかったのかは解りませんが、
その後も何回か鳴り響き、何故か鳴ってる間は三人ともジッと動きませんでした。
そんなこんなで倍の時間がかかったジジイが終わり、
ようよう会計をする時に、又々鳴り響き、ジジイは話しだしました。
曰く「頭を刈ってもらってたんや。よう混んどったわ。今々終わっから帰るから心配せんでエエ。それからなあ…」
店主はレジの前で、私は待合室のソファの前で、
おのおの立ち尽くしながら、
ジジイのトークショーが終わるのを待ち続けてました。

私の時の店主は
最初に「お待たせしてすいません」
最後に「お待たせしてすいませんでした」
以外は無言で刈ってました。


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