進化退化

投稿日:2013/09/30

休日の昼下がりに、カッターシャツを買いに行きました。
カッターシャツのサイズは、
TシャツなどのS・M・Lと違って、
首周りと袖の長さで決まります。
現在、着ているサイズは首41の袖84ですので、
通常の規格よりも腕が長いのです。
ピッタリサイズの在庫は、大抵種類が少なく、
「もっと長い袖を、もっともっと長い袖を」と探索をしますので、
カッターシャツ業界から『袖長男』と呼ばれているのも不思議ではありません。
そんな袖長男が店舗に到着しました。
店舗内の季節はすっかり秋で、気の早い一角には、マフラーや手袋の冬商品も並んでいました。
季節は無視してカッターシャツの棚に向かいます。
個人的に脇汗対策の観点から、真っ白のカッターシャツはNGですので、
その時点で選択肢は随分と減ります。
流行りのボタンダウン型は、ネクタイが固定され過ぎて、首周りが苦しく感じる事があるのでパスし、
襟だけ白のタイプは、コミカル過ぎるのでパスしました。
これで更に選択肢は減りました。
少ない選択肢の中でようやく二点を選んで、
いざ買おうとした時に、大切な事を思い出しました。
最近、太ったのか弛んだのかは解りませんが、
ちょいちょい首がきつく感じる事があったのです。
思えば以前に測定されてから、十数年は経過しています。
腕の長さが、伸び縮みするとは思えませんが、
首周りはどうなんでしょう。
アゴを支える筋肉なり頬肉なりが年令を経る毎に劣化して、
首に流入してくる事態はありそうです。
店員さんに測定をお願いするのが正解な気がしました。
カッターシャツ部分の店員は、気さくな近所のおばちゃん風の人が一人しかいません。
先客のお爺さんとカウンターで顔を寄せて、何やら話し込んでましたので、
ツカツカ近寄って耳を澄ませば、「膝が痛くて階段のある店へは行けなくなった」的なトークをしていました。
店内をウロウロしつつ時間を稼ぎ、爺さんが帰ると同時に測定を頼みました。
使い古したメジャーをキスする体勢で首に回され、
「39やね、プラス2やから41!」と言い、
「ついでに袖も測るわね!えーと…84やわ!」と進化も退化もしてない宣言をされました。
袖を測りながら「おばちゃん、お昼に餃子食べたから、ニンニク臭かったんと違う?」と告白されました。
カッターシャツは無事に購入できたのですが、
先程のお爺さんにクレーム喰らったのかと、心配になりました。
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隣人歌声

投稿日:2013/09/29
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隣の部屋の男性が、週末になると歌を歌っています。
EXILEだったり、懐メロだったり、きゃりーぱみゅぱみゅだったり、英語の歌だったりします。
毎回音楽に合わせて歌うのですが、窓全開の時期には、結構な爆音が早朝から響いています。
高校生らしく夏休みは暇に任せて、連日リサイタルが開かれました。
残念ながらあまり上手くなく、どちらかと言えば下手くそに分類される上に、
開催が早朝や深夜になる事もありましたので、正直困っていました。
その後、誰かがクレームを入れたのか、朝は8時から、夜は22時までと多少なりとも改善されました。
彼はどうやらバンドを組んでいるらしく、
メンバーが集まってワイワイしている事もありました。
最近のバンドは、「ファッション・モンスター」までカバーするから大変です。
しかし、ここ最近はパッタリ聴こえ無くなり静かな日々を過ごせるようになりました。
先日の台風の夜、外から「トコトコ」と言う音がしました。
風でトタン屋根がパタパタする音かと思いましたが、
翌朝も「トコトコ」は続きました。
換気扇に小鳥が巣を作ったのかと、
外して観察までしましたが違います。
よくよく聴いてみると、「トコトコ」の合間に「イェー」や「ダーダバダー」等の声もします。
それらはどうやら隣の部屋から響いてきています。
音は台風の夜以降、連日連夜続きました。
想像するに、一向に上達しない歌唱力が故に、
遂にヴォーカルを外され、ドラムかパーカッションに転身させられたのではないでしょうか。
「トコトコ」は並べた座布団をスティックで叩く打撃音に違いありません。
そうやって練習していた貧乏臭い友人がかつていた事を思い出しました。
なんにせよ新しいドラマーの誕生です。
まさに嵐を呼ぶ男でしょう。
いかんせん、彼の持って産まれたリズム感の無さは致命的で、
「トコトコ」は貧乏ゆすり並のビートしか感じられませんが、
コーラス部分はみるみる上達し、「イェー」が「ゥオイェーァォ」にまで成長しました。
とうとう巻き舌を覚えたみたいです。
『人は挫折を知り、己を知り、それを乗り越えた時に成長する』みたいな言葉を、隣の彼に教えられた気分です。
そんな彼も、ドラマーとしての限界を感じ、
最近バンドを脱退したみたいです。
やがて自分がリーダーのバンドを組んでヴォーカルに返り咲いたのではないかと推測しています。
理由は、奇しくも今朝、リサイタルが再開され、その歌声でたたき起こされたからです。
リサイタルは、昼ご飯を食べている今も続いています。
復活リサイタルは、鬱憤を晴らすかの様に長時間に及んでいます。
久しぶりに拝聴した彼の歌声は、一際酷くなっていました。
巻き舌の影響でしょうか。


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駐車空間

投稿日:2013/09/26
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駐車場というのは、基本的に欲望の渦巻く場所です。
たかが駐車するだけなのですが、
個々に「できるだけ近い場所に」とか
「できるだけ日の当らない場所に」とか、
思いを巡らせながらの陣取り合戦が始まります。
私などはそういう渦に巻き込まれるのが好きではない為、
駐車する車が多い場合は、
「できるだけ車のいない場所に」停めたりします。
また、観光地などの駐車場など本当に嫌になります。
観光地なので皆が皆、空いているスペースを狙っています。
致し方ないことではありますが、
例えばこちらが停まっていて出ようとした時に、
「ここのスペースが空く」と分かった車が
私はここに停めますからね、というオーラを出すのはいいのですが、
誰にも取られたくない思いが強い場合は、
出る車のことを考えない場所に車を停車させ、
「さあ、早く出ろ」と無言のメッセージを送って来ます。
「お前がそこにおるから出られへんやろうが!」と
言いたい気持ちをぐっとこらえきれず、ぶつけたりもしますが、
人の振り見て我が振り直せ、ということで
私自身が駐車をする場合は他人になるべく嫌な思いをさせないように、
すばやい駐車とすばやい出庫を心がけています。
先日、とある施設に用があり行きました。
そこは利用者数に比べ、駐車台数が少ない所ではありますが、
回転が早い為、さほど苦労せず駐車することができます。
私が行った際、空いている場所がない状態でしたが、
施設から戻ってくる人が見えたので、しばらく待つことにしました。
戻ってきた女の人は車に入って、そのまま何も動きがありません。
もう1人戻ってきた人がいたので、その人が動き出したらと思い見ていましたが、
そのおっさんも入ったきり動きがありません。
また更に違うおっさんが戻ってきて、そのおっさんは車に入るとすぐに出て行きました。
助かったと思い、そこへ駐車をし施設へ入る時にチラと見ると、
最初の女の人は綿毛のついた耳かきで耳掃除をしていました。
「その耳掃除は今、ここでする必要あんの?!」
と言いたい気持ちをぐっとこらえて、用事を済ませに向かいました。
戻ってくると耳掃除の女の人は今度はタバコをゆっくり吸っていました。
もう一人のおっさんは何やら携帯を操っていました。
私がもし、デイタラボッチなら、
この女の人の後ろにおっさんの車を掴んで
すっと移動させたいです。


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天橋立風

投稿日:2013/09/23
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久しぶりに買い物に県外へ出かけました。
3連休の初日でしたので、交通量も多く、
四日市で故障車が発生したら、
伊勢関インターまで渋滞が波紋するという事態で、
私もその渦に若干巻き込まれつつありました。
そんなこんなで目当てのアウトレットに着くと、
すでに買い物を終えたであろう家族連れなどが
駐車場へと向かう際にすれちがうのですが、
大抵の子供が何やらびしょ濡れ感を出していました。
確かに、前日に比べてその日は暑く、
夏を思い出すような感じでしたが、
そんなに汗かくかね?と思っていました。
そうこうしていると前方にパンツ一丁の男児がいました。
ひとっ風呂浴びたような彼はなぜそのような
格好をしているのかかなり疑問でした。
まあ、いいやと買い物モードに移り、
買おうとしていた商品もゲットし、少しモール内を散策しました。
するとモール外にあるちょっとした公園スペースの噴水付近で
子供たちが水浴びをしていました。
これで件のびしょ濡れ子供の謎が解けました。
見るものも見たので帰ろうと歩いていると、
前方に水浴びをした後の男児がだだをこねていました。
「お茶ー」
「ジュウスーー」
「おぉお茶ぁぁーー」
たぶん、水浴びをして疲れて喉が渇いたのか
母親の手をひっぱりながら叫び、
チラチラと男児の姉が持っているカルピスウォーターを見ていました。
私の予想では、水浴び前におねだりをし、
ジュースかアイスかの選択を言い渡された際に、
男児はアイス、姉はジュースを選んだのだと思われます。
アイスをほおばりご機嫌で水浴びをしたのでしょうが、
アイスは喉が渇くと事実を彼はまだ予想できない年頃ですので、
己の欲望にのみ正直に生き、失敗をしているのだと思います。
車に着いたら持参のお茶があるのか母親は男児のだだこね攻撃を無視していました。
姉もチラチラ狙われるカルピスウォーターをしっかり握り、無視していました。
無視攻撃に対抗しようと男児は身体全身でだだをこね始めました。
天橋立を覗くような股から顔を出して「ジュースー」と叫びました。
2・3歩進んでは天橋立、2・3歩進んでは天橋立。
父親は「いいから早く歩いてよ」と力なく言っていましたが、
天橋立攻撃はそれから駐車場までの道のり約100mの間続いていました。
買い物に来たと思えば水浴びをし、喉が渇いたとだだをこねる。
小さい子供を持つ親は本当に大変なんだな、と思いました。
親、頑張れ。


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強奪行為

投稿日:2013/09/22
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トビの被害が多発しているんだそうです。
観光地などで、空から急降下して食べ物を奪う行為で、テレビで注意を呼びかけていました。
湘南海岸では通称「トビ被害」と言って看板を立てて対策をしていましたが、
ハンバーガーやクレープなんかを強奪されていました。
トビは羽を広げると1.5メートルもあり、くちばしや爪が鋭いので、
食べ物を奪われた際に、それらでケガをする人も続出しているんだそうです。
特に秋は、若いトビが巣立つ時期らしく、
強奪行為に馴れてない若いトビ達に、食べ物と間違えて腕を掴まれてしまって負傷するパターンも多く、自称「うっかりトビ被害」も多数発生するんだとか。
人間にしても、夏は恋の季節ですし、
まだ不慣れな恋人達が、ぎこちないデートに繰り出すのが秋ですから、
両者のタイミングが悪い方に重なったという事なのでしょう。
夏の喧騒とは又違った初秋の海は、三回目のデートに相応しい場所です。
そうそう、お金がかかるデートばかりもしていられませんから、
駐車場代と屋台の食べ物代程度の出費で抑えられるのは、願ったり叶ったりです。
しかし、そんな思惑を嘲笑うかの様な、トビの行動、久々に痛快な気持ちにさせてくれました。
治療費も馬鹿にならないでしょうが、頑張って欲しいものです。
そもそもトビは蛙なんかを食べて、人間を怖がる生き物なんだそうですが、
餌付けをされる間に、人間の食べ物の味を覚え、なおかつ人間への恐怖心も無くしてしまい、
人間を襲いだしたんだそうです。
自業自得です。
そういえば、小学生の頃、実家の近所の魚屋もアラを捨てるのを面倒くさがり、
橋の欄干に板を置いてトビのエサ場にしていました。
やがては、エサ場に置かなくても、外の流しで魚を捌きながら、
アラを空にポーイと投げると、サーとトビがキャッチするようになりました。
何人かの子供が、そのショーを少し離れつつ見ていたものです。
ひょっとすると、あれがエスカレートしていくと、店頭の刺身を強奪する流れだったのでしょう。
地元ではトビをトンビと呼ぶのですが、
その魚屋はやがて「トンビ屋」と呼ばれるようになり、しばらくして閉店してしまいましたので、
どこまでエスカレートしたのかの真相は謎のままです。
さて、恥ずかしながら私も、日本海沿いの観光地で、トンビにソフトクリームを奪われた過去があります。
ヘラヘラと浮かれ気分で歩いていたら、後ろから持ってかれました。
奪われただけならまだしも、コーン部分をガシッと掴んで上昇気流に乗ったトンビの足元から、
白いアイス部分がポトリと海に落ち、トンビは空のかなたへ消えてしまいました。
せめて味わってもらいたかったですね。


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強制執行

投稿日:2013/09/20
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必要に駆られて、ネットでソフトをダウンロードしました。
ソフト自体は、可もなく不可もなく稼動しているのですが、
ダウンロードした日以来、
ディスプレイに何かが出てきます。
『何か』は何パターンかの姿で登場します。
全部英語の文章の場合と片言の日本語の場合があり、
出て来る度に、警告されたり、PC容量の残量の危険を告げたり、点滅したり、勝手にスキャンをしたりして大騒ぎをしていました。
英語はよく解りませんが、日本語を読むと『PC容量のキケン(ドクロマーク)』『スキャンが必要です?』とありましたので、
何かマズイ事態が起こってるんだろうとは思いましたが、
何かにはどこにも『×』マークがないので、消すことも出来ず、
ただただ見守っているだけでした。
やがて何かはエスカレートしだして、幾つものパターンを複合して登場するようになり、
勝手に次々と画面を開いてはスキャンをしだす行動にでてきました。
私のPCは機能性より機動性に重きを置いている為、
幾つかの作業を同時進行すると
テンパって白いのがクルクルと回って「待って」と訴えてくるのですが、
次々開いた全ての画面から「待って」と訴えられました。
小さな力でも、何個か集まると大きな力になる募金箱みたいなもので、
何とかしなければと思うようになりました。
眺めていると勝手スキャンの後に『何$です』と表示されている事に気付きました。
この請求の態度は明らかに喧嘩を売られていると感じた私は、
ようよう重い腰をあげ調べてみました。
何かは「ポップアップ広告」と言う奴らしく、
同様の症状で苦しんでいる人が多数おり、
又その対処法も書かれていました。
対処法の指示通りに、アンインストールと言う追い出し作業を始めます。
その作業中も、勝手スキャンやら警告やらPCからの訴えやらは続きますが、
心を鬼にして強制執行を続きます。
やがて対処法の通りに追い払う作業も終盤戦になると、
『これであなたとお別れするのはほんとに残念す』と、赤いバックに黄色の太文字で片言のメッセージが呼びかけられましたが、キッパリと無視して追い出しました。
達成感とちょっとした寂しさが私を包みました。

翌朝、PCを起動させると、初見のポップアップが登場していました。


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独眼兄貴

投稿日:2013/09/16
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真島の兄さんには色んな事を教わりましたが、
その中でも一番印象に残るのは『男は長いものに巻かれてはならない』と言うスピリットでしょう。
つい最近も、跡目争いで幹部連中のみの会議に出席していた真島の兄さんでしたは、
私利私欲の謀略合戦をジッと黙って見ていましたが、しばらくして
「アホくさ」
「お前らで勝手にやっとけや」
「ただし俺のシマへ入ったら許さんでえ」
と会議室を出てってしまいました。
思い起こせば、真島の兄さんとの出会いは、
随分とはるか昔になりますので、
思えば長い付き合いですね。
左目に独眼竜の眼帯をし、素肌に細身のジャケットを合わせ、背中には般若。
手に持った長ドスをペロペロ舐めながら、
「イーヒッヒッヒッ」と笑う兄さんと対決したものです。
素早い動きに翻弄され、幾度も苦杯を強いられました。
正直言って、「兄さんに勝ちたい」「兄さん以上の男になりたい」との思いのみで、
これまで私は精進して来た気がします。
普通の人には考えられない事態におちいりながら、
何度もその度に死線をくぐり抜けてきた兄さん。
そんな兄さんと三度目に巡り合った時の事を思い出します。
兄さんは極道から足を洗い、黄色のヘルメットを被って、
建築会社を経営していました。眼帯はそのままでした。
元の若い衆からは「社長」「社長」と呼ばれていましたが、
対決となれば、相変わらずの素早い動きで、
私は相当追い詰められましたね。
その後協力を買って出てくれ、
CIAさながらの無数の監視カメラのコントロールルームから仕入れた貴重な情報が、
どれだけ私を助けてくれた事でしょう、感謝しきれない思いです。
そんなカタギの兄さんに、訳あって再び極道への復帰を頼んだのも私でした。
無茶な要求に当然、首を縦に振らない兄さん。
「言う事を聞かせたかったら俺を倒せや」と対決になってしまいました。
何度も「もうダメだ」と思いましたが、
兄さんに勝つ事が兄さんへの恩返しと思い、
時間はかかりましたが何とか打ち破れました。
「相変わらずごっついのう」
「ワシはごっつい奴、好きやで」
「お前の頼み、聞いたろやないけ」
とありがたい言葉をかけて頂いたご恩は、生涯忘れないでしょう。
真島の兄さん、これからも手のかかる弟分の私をどうぞよろしくお願い致します。
m(._.)m
あ、そうそう、真島の兄さんはゲームのキャラクターですんで。


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小一之夢

投稿日:2013/09/15
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最近、年明けにやる同窓会の関係でかつての文集を目にする機会があり、
ふと自分が小1の時に書いた文集を思い出しました。
小1の二月、大好きな母方の祖父が亡くなりました。
漁師だった祖父には、色んな事を教わりました。
祖父にしても、私が初めて外孫でしたので、可愛がってもらってました。
初めて祖父の船で、釣りに連れてってもらった時には、
一学年上の従兄弟がアジやキスを釣り上げる中、
私は中々釣れずにいました。
やっと掛かったので、ウキウキしながらリールを巻き上げると、茶色いトゲのある不細工な奴でした。
祖父は「触るなよ」と言い、トゲをパキパキと折って海に捨てました。
アジやキスのキラキラ感に比べると、何ともやりきれない気分で凹む私に、
「立派なガシやのう、煮付けにすると一番美味い魚や、アタガシや」と言いました。
その日は一匹だけの釣果で帰ってきました。
元々、魚の煮付けは嫌いでしたが、走って持ち帰り、祖母に「ばあちゃん!ガシ、アタガシやって!煮付けにして!」とねだりました。
それ以来、全ての魚の中でアタガシが一番好きです。
執り行われる通夜や葬式の様子が、大好きな祖父との思い出も
絡んで私の中で大きな影響を与え、
その中心となるお坊さんにひどく目を奪われていました。
その後、三月に学校で文集を書くことになり、
お題が「将来なりたいもの」でした。
当時、私は特に将来なりたいものがありませんでしたが、
先日の出来事に強い印象を受けたお坊さんのことを思い出し、
お坊さんになりたいと文集に綴りました。

「僕は大人になったらお坊さんになりたいです。
金ぴかの座布団に座ったお坊さん、
木の楽器みたいなのを叩くお坊さん、
キンピカで輪っかのついた服を着てダミ声で喋るお坊さん。
そんなお坊さんになれたらいいなあと思います。」

しかし、私の生まれた地域ではお坊さんの事を皆、
「おっさん」と呼んでいます。
したがって私はその呼び名のまま文集にしたためました。

「僕は大人になったらおっさんになりたいです。
金ぴかの座布団に座ったおっさん、
木の楽器みたいなのを叩くおっさん、
キンピカで輪っかのついた服を着てダミ声で喋るおっさん。
そんなおっさんになれならいいなあと思います。」

とりあえず今、おっさんにはなりました。


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頭痛劇薬

投稿日:2013/09/14
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頭痛持ち、というほどでもありませんが
ときどき頭が痛くなったりします。
痛いなぁと思いながらも寝て起きれば治っているので、
大抵放置をしています。
病院に行くほどでも、頭痛薬を飲む程でもなく、
疲れが溜まっているんだな位に認識していました。
話は変わりますが、人を救うのは何も医療の力だけではありません。
よく感動番組などでやっているように、
何かの言葉であったり、
雄大な景色であったり、
守るべき者の存在であったり、
色々なことが時として自分を救いあげることがあります。
以前、とてつもない頭痛を経験したことがあります。
あんまりにも痛く立っていられないほどでした。
今までもひどい頭痛というのは体験してきましたが、
比じゃないくらいに痛かったので、人生で初めて救急車を呼びました。
運ばれる間、ずっと不安な気持ちでいっぱいでした。
頭痛というのは殴られて痛いとかではなく、
どうしたって「脳」と直結していると思ってしまいます。
大きな病気なんじゃないだろうか。
そんな気持ちで病院につき、少し医師の診察を待つ間、
待合室で腰かけていました。
その間にも頭痛は治まらず、不安と共に非常に嫌な時間でした。
ふと人の気配がして振り返ると、
手は三角巾、足は包帯を巻いて引きずっている男性が立っていました。
見るからにザ・大怪我といった風貌でした。
対応にきた看護師さんに泣きそうな顔で
「腹が痛いんだよぉぉ」と言ったので思わず吹きそうになりました。
その大怪我具合は何? 痛いのは腹?
あまりにも面白い出来事に今まで私を苦しめてきた頭痛がウソのように消えました。
その後、医者に診察してもらいましたがすでに頭痛は治まっていましたので、
一度精密検査を受けるよう助言され、返されました。
裸足でしたので、何とかスリッパを購入させてもらい
徒歩で家まで帰りました。
あの時、私を救ったのは間違いなく大怪我したおっさんだったのです。


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近所床屋(2)

投稿日:2013/09/09
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(昨日の続きです)
しばらくして、座席の様子をチラ見して驚きました。
結構な時間が経過したにもかかわらず、まだ「蒸しタオル頭乗せ終わり」の状態だったのです。
時計を見ると10分かかってます。
何事かと耳を澄ませば、座席のお爺さんが話してます。
曰く「最近の韓国と中国はけしからん!弱腰の日本もどうかしている!」
みたいな内容です。
剣幕に圧倒されていた店主も、業務を再開し、ようやくカットへ。
カット中もお爺さんは喋り続けます。
曰く「飲食店の店員が悪さをするのはけしからん!自慢げにネットに載せるのもどうかしている!」
みたいな内容です。
店主は今度は手を止める事無く、カット業務を遂行しながら、「そうっすよねぇ」と生返事で対抗しつつ、座席を倒して「蒸しタオル顔乗せ」へ移行します。
顔にタオルを乗せられてもジジイは、まだモゴモゴと喋ってますが、
中身はさっぱり解りません。
諦めたのか始めて黙りました。
しかし、顔のタオルを取ると、待ってましたとばかりに喋り出しました。
しかも店主が生返事で逃げれない様に、
語尾に「どう思う?」と付けだしたのです。
曰く「カミナリで買ったばかりの友人のテレビが故障した。どう思う?」
曰く「学生時代は大阪でゲバ棒を持って運動をしていた」
曰く「だから、どっちかと言えば(声をひそめて)左翼的やった。どう思う?」
曰く「出始めの頃は電卓が30万した」
曰く「その電卓を買う人を十人集めたら一台10万にするって話に乗って集めた」
曰く「しかし一台12万にしかならなかった」
曰く「でも18万安くなったから皆喜んだ。どう思う?」
曰く「インターネットを毎日している」
曰く「週に二日間は朝までネットをして徹夜」
曰く「年をとっても情報は自分で捜さなければならぬ。どう思う?」
マシンガントークの中、携帯電話の音が鳴り響きました。
ジジイは話を止め、不機嫌そうに私の座る待合室の方を見て、
「最近の若いモンはエチケットがなっとらん」的な雰囲気を出しましたが、
音はジジイのベストからでした。
店主がベストを渡すと前ポケットから出したスマホを一瞥し、
「コレはエエんや、今度NTTに行って聞かなアカンのや」とベストのポケットにしまい、店主に渡しました。
店主がハンガーに戻すと、再度鳴り響きましたが、
ジジイは「エエよ、ほっといてエエ」と言い、鳴り響かせ続けます。
なぜ先程手にした時に、マナーにする等の対策をしなかったのかは解りませんが、
その後も何回か鳴り響き、何故か鳴ってる間は三人ともジッと動きませんでした。
そんなこんなで倍の時間がかかったジジイが終わり、
ようよう会計をする時に、又々鳴り響き、ジジイは話しだしました。
曰く「頭を刈ってもらってたんや。よう混んどったわ。今々終わっから帰るから心配せんでエエ。それからなあ…」
店主はレジの前で、私は待合室のソファの前で、
おのおの立ち尽くしながら、
ジジイのトークショーが終わるのを待ち続けてました。

私の時の店主は
最初に「お待たせしてすいません」
最後に「お待たせしてすいませんでした」
以外は無言で刈ってました。


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