人間交差

投稿日:2014/09/05
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15年程前、コンビニでアルバイトをしていた時に、なぜか雑誌でコラムを書く事になりました。
雑誌と言いましても、薄いフリーペーパーで、よくある飲み屋や美容室のクーポンがメインのやつの、後ろの方の半ページです。
打ち合わせに行けと言われ、編集部を訪ねると私より少し年上の女性が担当でした。
その編集部は女性ファッション雑誌をメインで作っている編集部の横にポツンとありました。
流行りに乗って、実験的に姉妹誌として初のフリーペーパーを発刊する様子で、別のフリーペーパーが沢山置いてありました。
ジャージで名刺は持ってませんが挨拶を済ませ、コンビニでどんな内容なら書けるのかを、端のデスクの更に端で聞かれました。
駐車場の野糞の話や万引き対策の話等をダイジェストでして、「初回はそのアゲの話でいきましょうか」と言われました。
因みにどん兵衛のアゲを、ポット脇に忘れたオッサンの話です。
編集者は「いついつまでに初校を送ってください」と名刺のメールアドレスを示しました。
「しょこうって何です?」
「最初の原稿です」
「そんな早う書かなあかんの?」
「ええ、こちらで校正もしますから」
「こうせいって何です?」
「文字や倫理的にOKかをチェックします」
「りんりてきか…赤ペン先生って事やな」
「…ええ、まあ、それでいいです、挿絵のイラストもメール添付しといてください」
「メールて、携帯しか持ってへんけど郵便でもええんかな?」
「…はあ」
初校を送ると電話がかかってきて、
「アゲがアゲに見えないから描き直してください」と言われました。
「乾燥したアゲはそんなもんや。アゲって最初に気付かへんだのが面白いんやんけ。匂い嗅いでダシを感じる所が死んでしまうわ。」
色々と反論しましたが、妥協案として、器を横に描く事になりました。
このよみものに挿絵が無いのは、その編集者の影響かも知れません。


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