昔日鉄板

投稿日:2011/08/06
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高校の時に、部活仲間とか下宿の後輩とかと行っていた喫茶店がありました。
駅前ガード下にある店でした。
鉄板に薄焼き卵のナポリタンが美味くて、いつも大盛り(450円位)を頼みタバスコをアホ程かけて食すのです。
酔狂な私はその店の全ドリンクを制覇しようとしてました。コーヒー・アイスコーヒー・レモンスカッシュ…と行く度に一種類ずつ違う飲み物を頼むのです。
そして遂にラストドリンクの時が来ました。
最後のメニューは「キューピット」。
『ママさんキューピットって何?』
『フフフ、新作なんよ、飲んでみて』
飲みました。
『どう?どう?』
『うーん、うまくもなしまずくもなしやな!』
『そっかあ、残念!』
『残念なんは俺やわー』
卒業してその土地を離れ、店には行かなくなりました。
10年振りに前まで行きましたがシャッターが閉まりっぱなしで、誰もいませんでした。
しばらくして店舗の解体工事が始まりました。
騒いで机の上で踊ってたらひっくり返ってグラスを全部割って怒られた事や、初めてできた彼女を連れてってママさんにヒヤかされてどう対処して良いのか解らず怒った事など、色んな事が解体されてしまう感覚に囚われました。
しばらくして喫茶店は焼鳥屋になってしまいました。
その付近には近づかなくなりました。

後日、その焼鳥屋が喫茶店と同じ名前だと気づいて行ってみるとママさんがいました。
『久しぶりやねえ』
『店変わっとたから…』
『ずっと焼鳥屋やりたかったんさ』
『俺のスパゲティ代貯めて建てたんや』
『フフフ、知らんわ』

今年のお盆に卒業20年を記念した部活の同窓会をそこで開きます。
ママさんにナポリタンを出してくれと頼みましたが『もう鉄板が無いわ』と断られました。


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